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多くの妄想と少しの現実で構成されるブログ
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Thut-The thing which unifies time and wisdom-

第十五話「始祖と才能」











借りてきたCDをデッキに放り込み、アンプを温めて再生ボタンを押す。
数秒の静寂の後、攻撃的なバイオリンの旋律がスピーカーを振るわせた。

(悪くはないな)

帰りがけに、寄ったレンタルショップで借りた、件のCDだ。
何枚かあったCDの中から、借りてきたのはベスト盤と、オリコンのウィークリーアルバムチャートで三位に入ったという新アルバム。
今聴いているのはベスト盤の方だが、イントロでこれだけの好印象を与えられるというのはなかなかのものだ。

一旦寝室に引っ込み、制服から部屋着に着替えて、リビングに戻ると、冬馬が流れている曲の旋律を鼻歌で歌いながら、文庫本を開いていた。

「いいメロディだな」
「だろ?まぁ、昔に比べるとアクは薄くなったが、洗練されてるな」
「昔って、前から知ってたのか?」
「あたぼーよ、情報屋ってのは常に時代を先取りしていかなきゃやっていけないからな」

日本の音楽界事情に精通していることが、情報屋としてどう役に立つのかは不明だが、あえて突っ込まないことにした。
冬馬のサブカルチャー知識は無駄に広くて深いのだ。

トラックが変わり、一転してへヴィメタル調になった曲をBGMにしながら、エプロンをして台所に立つ。

「今日の晩飯はなんなんだ?」

調理開始の音を聴き付けた冬馬が、興味津々といった様子でたずねてきた。
そちらには目をくれず、肉屋で詩織に色目を使わせて値引きした牛の第二胃袋、即ちハチノスの下処理をしながら答える。

「エビピラフとトリッパ」
「トリッパ?」
「ハチノスのトマト煮だ、スペイン料理だな」
「へぇ、それも親父から教わったのか?」
「いや、こいつは独学だな」

というか、料理は基礎を叩き込めば、レシピを見れば作れるし、トリッパのような煮込み料理は感覚でなんとかなるものだ。
……至極まれに、そこで池波正太郎を読んでいる奴のように、絶望的なセンスを持ち合わせた人間もいるが。

「お前は、エプロンの似合ういい嫁さんになるよ」
「……褒めているんだと受けとって置く」

そこで会話は途切れ、一時、部屋はスピーカーからばら撒かれる、色とりどりのスケッチのような音楽と、
大小さまざまな、調理に伴う音、そして、時折冬馬がページをめくる乾いた音で満たされた。

とても心地よい一瞬。
内容が乏しく、ボキャブラリーの少ない会話をすることもなく、かといってそれが相手をないがしろにしているわけではない、という関係。
相手を信頼しているからこそ成り立つこのシチュエーションは、朔夜にとって非常に心が休まるひと時であった。
朔夜は、同年代の人間がいう、「友達」や「恋人」という関係が嫌いだ。
大した用もないのに、まるでそうしていないと不安で死んでしまうかのように延々としゃべり続け、
意味も無く時間を浪費し、誰彼が付き合った分かれたと、いちいち嬌声を上げる。
大多数の人間が、それを青春と呼ぶのだろうが、それが朔夜にはどうにも理解しがたいことだった。

中学生の時から、魔導士として現場で戦い、生きるか死ぬか、殺るか殺られるか、という命のやり取りをしてきた朔夜にとっては、それは無理のないことかもしれない。
同年代の人間の中で、どれほどの人が比喩ではなく死にかけ、人が殺される瞬間を目の当たりにし、また、その手で人を殺めたことがあるだろうか?
あまりにも人の死に様に触れすぎた朔夜は、それゆえにどこか達観したところがある。
表面的に朔夜との付き合いがある人間が、一様に朔夜を「大人びている」「どこか褪せている(摩れている)」と評価するのは、そのあたりが起因しているようだ。

そんなわけで朔夜には友達が少なく、また当然のことながら彼女などできた試しがない。
ルックスは、適度な身長に体型、整った目鼻立ちと少々オーバースペック気味なので結構な人数の女子が好意を持っている、というのは、
生まれてからこのかた十六年間の付き合いである冬馬の知り及ぶところであるが、その持ち前の朴念仁さの前に倒れたのが七割、
そしていつも隣で目を光らせている詩織の前に倒れたのが、二割五分らしい。残りの五分は、秋葉を含めたあきらめの悪い人間のようだ。
ちなみに詩織と朔夜の関係は、朔夜自身が言うには、「師匠と弟子」というなんとも味気のない関係らしい。
それにしては、詩織のアプローチは過剰だと思うのだが、それを軽くスルーしているのは、中学時代、無自覚で十本ほどのフラグを折るという偉業を成し遂げた男たるゆえんだろうか。
いずれにしても、朔夜に好意を持ってしまった女は不憫なものである。

(まぁ、あいつは一人っ子だから結婚は一応考えてるんだろうな)

と、本を読みながら、マルチタスクで思考していたのを単一化して、冬馬はしょうもない独白をする。
一条家三十三代目当主(予定!)としては、血の継承は将来的に回避できない懸案事項であろう。
……生涯独身貴族で通すつもりの冬馬にはあまり縁の無い話なので、どうでもいいといえばどうでもいいのだが、
幼馴染というには少々強すぎる縁と、親愛の情を持っている身としては、他人事とわりきるのも難しい。

(女衆はまだ来ないか、丁度いい、ちょっと聞いてみよう)

「なあ、朔夜―――」

お前いい加減彼女でも作れよ、と、かなり突っ込んだ発言は、

「突撃!朔夜の晩御飯!」

という、音だけじゃ昨日の晩飯みたいな掛け声とともにベランダから入ってきた詩織にかき消された。
噂をすればなんとやらと言うが、某双子みたいなタイミングで出てこられると文句もいえない。「ほほぅ、捕らえろぉぅ!」とでもいえばいいのだろうか。
行き場を失った言葉を飲み込んで、台所のほうに目を向けると、丁度朔夜は炊飯器の炊飯ボタンを押したところだった。

「はいはい、今ピラフ炊き始めたところだから」

飛びかかり、いやあれは抱きつこうとしているのか、とにかくそんな体勢の詩織を片手で押さえながら、嘆息気味に朔夜が答える。
そしてそのままグシャグシャと頭をなでると、腰を落ち着けるように促し、今度は煮物に取り掛かった。
軽くあしらわれた当の詩織は、ご飯をくれる飼い主に従順なペットのように、いそいそと食卓の椅子に腰をかけている。

(ほんとに師弟関係か……?)

今のやりとりは、どうみても付き合いの長い恋人同士にしか見えない、役柄が男女逆転しているのは別として。
首をかしげながら、ふと気配を感じ、詩織が開けっ払ったベランダの窓に目を向けると、当惑した表情の四姫が棒立ちしていた。
どうやら、詩織に置いていかれて、入るタイミングを失ってしまったらしい。

「……失礼します」

お、入ってきた。

「あぁ、四姫か。勝手に入ってきていいって言っただろ?遠慮するな」

おたま片手に、手招きする朔夜。
うん、いい画だ。やはりこいつはいい嫁になる。

「そういやなんで冬馬がいんの?」

食卓を囲む椅子の一角をぽすぽすと叩いて、四姫を呼びつつ、思い出したように詩織が尋ねる。
と、同時に朔夜がキッチンから、四つのティーカップを持って出てきた。
無言で差し出されたそれを受け取りながら、端的に理由を答える。

「俺の部屋のブラウン管がついにお亡くなりになってな、どうしても見たいDVDがあったから朔夜のテレビで見ることにしたんだ」

もはや今の時代においてはアンティークともいえようブラウン管。
しかしその画質を主としたパフォーマンスは、薄型TVの時代に移行してから数十年たった現在の製品に比べても遜色のないものだった。
むしろ安価な液晶はおろか、下手なプラズマテレビは未だにブラウン管のパフォーマンスを超える域を出ていない。
が、長年の酷使に、つい先日お亡くなりになってしまわれたのだ。
基盤の故障のようだが、メーカーのサポートセンターに電話しても部品などあるはずもなく、
しょうがないので同じモデルを、コネを駆使して手に入れるか、買い替えをするか検討していたところに、件のDVDが舞い込んできたのだ。

「あれ?でも、冬馬んちの居間にこれと同じのあったじゃん」

瀟洒なメイド、じゃなくて弟子から差し出された紅茶を美味しそうに飲みながら、詩織が指をさし、さらに尋ねる。
その先には、薄型の有機EL50インチディスプレイ、先月発売されたばかりの新製品だ。引越しの時に、テレビの相談をされたので買わせた。
確かにこれと同じものが、自宅の居間にあることにはある。
あるのだが……

「家族の前で見るには少々アレなものらしい」

返答に窮していたところに、朔夜が助け舟を出してくれる。
そうそう、家族の眼があるところで見るには刺激が……って、

「そういう誤解を招くような言い方はやめれ!」

突っ込み担当は朔夜のはずだが、思わずノリ突っ込みで反応してしまう。
ジト目でこちらを見てくる女性二名に対して、慌てて、

「別にいかがわしいものでもR指定がかかるようなものでもないって!ただの古い特撮だよ」

カバンから、現物を取り出して釈明する。
現在は放送コードが非常に厳しく規制されており、子供向けの特撮ヒーローものなんかは、出血等のグロ表現がNGなのだ。
現に、子供のころから日曜の朝に見てきた戦隊モノとかライダーは、斬撃を喰らっても火花しか散らない。
そして、手元にあるこのディスクには、丁度自分たちの親が生まれたころに放送された、規制が緩い時代の作品だ。
新世代特撮ヒーローの第一作目で、教育委員会に訴えられるなどの物議をかもし出した傑作らしい。

「俺も見たかった作品だし、せっかくだから飯も食っていけということでつれてきたんだ」

紅茶にラズベリージャムを落としながら、朔夜が補足をしてくれる。
詩織はふーんといいながら、しばらく怪訝な表情をしていたが、やがて興味を失ったのか、今度はヴォサノバ調になったBGMに話題をきりかえた。




――――――



「なぁ朔夜」
「うん?」

暗い部屋に、ディスプレイから放たれる千変万化の光が踊り狂う中、冬馬は画面から目を放さずに声を発した。

「気付いたか?」

ちらりとこちらに視線をくれ、日本酒の入った猪口を仰いで、主語を省いた質問をつぶやく。
何の話だ、と聞き返す手もあったが、冬馬が意としているところは十分理解できたので、短く、

「あぁ」

と答えた。

「俺は魔法のことは、知識でしかわからんが……どうなんだ?」
「……普通じゃない、例外中の例外、いや、異例中の異例といったほうがいいか」

夕食後に、いつものように鍛錬をしていた俺と詩織は、驚くべき事態を目の当たりにした。
四姫が、俺と詩織の組み手を見ながら、魔法らしきものを無意識に構築していたのだ。
気付いたのは二人ともほぼ同時、若干俺が早かったせいで、ガードが緩みクリーンヒットをもらってしまったが。
そのことに驚いたのか、四姫が構築していた魔法は発動することなく霧散したが、途中式から推測するに、完成していれば相当なものになっていた。
俺たちの使っている「魔法」というのは、文系術式、理系術式、基本術式のどれをとっても、ある程度の知識がなければ、指先に火を点すことすらできない。
だが、先ほどの四姫の構築しかけた魔法は、まぎれもなく、俺たちが使っているものと同様の代物だった。

「お前は何も教えてないのか?ほら、昼間に言ってただろ、なんか教えてるって」

確かに、ここ数日、俺は四姫に魔法史を教えてきた。
しかし魔法史には、ほとんどと言って良いほど、術式に触れる項目は存在しない。
世界史でアインシュタインについて習っても、相対性理論の中身には触れないのと同様だ。
なのに、四姫は魔法を構築した、しかも無意識で。
先ほどの例えでいうならばそれは、「相対性理論」という理論が存在する、という知識のみで、物理学の知識を一切意識せずに、
「相対性理論」を「証明」するという、馬鹿げた所業に匹敵する。

「その言い方だと前例は無さそうだが、どう対応すべきなんだ?」
「前例がないかは、局の記録を片っ端から漁ってみないことには断言できないが、俺も詩織もそんな話は聴いたことが無い。
今詩織が、上で魔力残滓の解析をしてるから、それが終わってから、どう動くかは決める」
「解析?」
「あぁ、四姫が構築しかけて霧散した魔法が、なんだったかを調べてもらってる。
理系だったのか、文系だったのか、攻撃魔法だったのか、防御魔法だったのか、補助魔法だったのか」

いづれにせよ、この分では、一旦四姫に局に赴いて検査を受けてもらう必要がある。
そのために、あらかじめある程度の適正は調べて置こうという魂胆だ。

「……覚悟云々の話では無くなって来たかもしれないな」

知識なしで無意識に魔法を構築した、これはもはや素質がある等という世界ではない。
ただでさえ人手不足な局としては、そんな人材をいつでも、喉から手が出るほど欲している。
とりわけ俺たちのような危険職、即ち戦闘員は欠員が激しい。(それに見合った報酬は出るのだが)
流石に、本人の同意なしで無理矢理、局員登録をさせるほど外道な組織ではないが、才覚のある人間には必ず覚醒者登録の際に、勧誘をする。

「四姫には話したのか?勝手に魔法作ってたって」
「いや、俺からはなにも。その辺は詩織に任せるさ」
「ふぅん」
「なんだその返事は」
「お前にしては珍しく、人に判断を押し付けるんだな、と」
「あぁ、魔法に関してだけは、最終的な判断は師匠に仰ぐことにしてるんだ」
「律儀だな」
「単に、あいつの方が俺より地獄見てるからな、経験則が違うんだよ」

少なくとも俺は、肉親が目の前で惨殺されるような体験はしていない。
だから、異能の力を持つことのおぞましさというのを、恐らく本当の意味で理解はまだできていない。

「そうか、ま、俺としては依頼した仕事さえこなしてくれれば文句はありません」
「そこは任せておけ」




――――――



昼間の暑気が嘘のような、少し肌寒い夜風が、長い髪をなびかせる。
詩織は一人屋上に残って結界を張り、四姫が見学をしていたあたりで解析魔法を展開していた。
複雑な幾何学模様と、無数の数式がちりばめられた陣の紅い光が、端正なその顔を、闇の中照らしあげる。

「―――魔力断片の集積完了――――第一から第七までの解析シークエンスに移行開始」

目を閉じ、コンセントレーションを極限まで集中させる。
魔力痕などを解析するために構築されたこの術式は、知識はもちろんのこと、非常に高度な演算能力と、集中力を必要とする。
例えるならば、数学の証明問題において、“解”から、“命題”を導き出す作業に似ている。
ただしその“解”は時間経過に比例して加速度的に虫食い状態になっていくので、まずその解が「何であった」かの推測から始めなければならなく、またとてつもない量の計算を必要としている上、
「解析対象の術式を使用した術者の計算のクセ」まで忠実に再現しないと、正解にたどり着けないのだ。

「――――解析シークエンスオールクリア、照合作業に移行」

本来この術式は、魔法によって発生した疑いのある事件や事故の現場に残された証拠を集めるために、鑑識に似た役割を持つ局員が使用する、
いわば技術職的な魔法であり、戦闘職である詩織が体得するような代物ではない。

「――――基本術式に該当なし、理系術式の照合を開始」

しかし、煉瀬の家に生まれた詩織にとっては、非常にポピュラーな術式だった。
そう、この術式を開発し、構築して証明し、汎用性を持たせたのは煉瀬の人間なのだ。

「――――理系術式に該当なし……あれ?」

解析魔法の全工程を終えた詩織は、首を傾げつつ、一度展開した陣を解除する。
かなりの光度を放っていた光源が消滅したことで、瞳孔の拡大が追いつかず、詩織の視界は一旦とても深い暗闇に支配されることとなった。

「……あれ?」

もう一度、疑問符つきの独り言とともに首をかしげ、詩織はその場に立ち尽くした。

前述のとおり、解析魔法は、逆証明とよく似たことを行う。
故に、解析できる魔法は、幾何学を利用している基本術式か、幾何学に加えてスカラーとベクトルを多様に織り交ぜた理系に限定される。
解析対象にできない、文系魔法を使用している魔導師は極々少数であるため、汎用性という点ではまったく問題は無いのだが……

(基本にも理系にも該当なし、でも文系魔法を構築してたなら朔夜が気付くはずだし……)

四姫の残した魔力痕の解析作業は、時間があまり経過していないため、比較的容易に行うことが出来た。
加えて、完成しなかった術式とはいえ、残された途中式は非常に単純なもので、解析途中の感触では、基本魔法だろうとあたりをつけていた。
が、出てきた結果は、古今東西の基本及び理系術式を、ほぼ把握している詩織の脳内データベースに一切引っかからなかった。

(でもなんだろう、この違和感……?)

まさか該当する術式が無いとは思わなかったという驚きとともに、湧き出てきた得体のしれない違和感が、詩織の胸に仄かな苛立ちを産む。
その苛立ちの原因を探るべく、解析のログを必死に頭の中から引きずりだし、意識を深い深い思考の淵へと沈めていく。

「っ、と。いけないいけない」

考えはじめてから何分立っただろうか、薄い長袖のシャツ越しに、冷たい夜風に当たりすぎたせいで、すっかり体が冷えこんでしまっていた。
このまま風邪でも引いたら、朔夜にまた、延々と小言を聞かされる羽目になってしまう。それはできれば勘弁願いたい
それでも、小言をぶちぶちと言った後はなんだかんだ言って、甲斐甲斐しく看病をしてくれるのだから、可愛いことこの上ないのだが。
魔導師やってなかったら、あいつは絶対看護士向きだろう、病院食もきっと美味しく作ってくれるにちがいない。

「とりあえず切り上げて相談してみますか………ぷしっ!」

ついにくしゃみまで出てしまった。
そして、

「………うそ、まさかそんな、でも……?」

天啓のように、くしゃみによって突如思い浮かんだ可能性に、再び詩織は立ち尽くした。

(理系魔法でも基本魔法でもない、文系魔法でもない。でも構造式は至極単純だった、もし四姫が構築したのが未知の魔法でないとしたら……!)

思いあたる解は、唯一つ。

「…始祖術式…………」

現在の魔法使いが使用している術式とは、戦後に世界中の大魔導師クラスの人間が集まって創り出した、いわゆる「統合規格」のことである。
その「統合規格」の、根幹の根幹に位置する魔法、それが始祖術式だ。
円と、ごく少数の線で記される始祖術式は、その名の通り、魔法の誕生とともに生まれた、世界最古の術式となる。
確かに、これならば知識無しで構築できてもなんら不思議はない。

もう一度四姫が座っていた位置に立ち、対象を始祖術式にスイッチした、解析魔法を展開する。
解析魔法は高い集中力を要するため、短時間でそう何度も使える術ではないのだが、そこは気合でなんとかすることにした。

先ほどの解析に比べはるかに短い時間で、詩織は展開した陣を閉じた。
始祖術式は構造が単純なだけに、バリエーションも少ないので、照合にもさほど時間がかからないようだ。

「始祖術式なのはほぼ確定したけど……なにこの魔力数値……」

しかし、その労力の少なさに比べ、もう一度さらい直して出てきた答えはトンでもないものだった。

術式にこめられていた、魔力の量が、始祖術式はおろかその上位の基本術式ですら制御しきれないほどの量だったのだ。
だが、先ほどこの目で見た、作りかけの魔法は、とても安定していた。

情報量の少なさ故に、扱いは非常に容易だが、その分非常に不安定な始祖術式。
それをカバーするために、ユークリッド幾何学を加えて確立させたのが、基本術式。
さらに安定性と拡張性を持たせるために多用な数学を用いたのが、理系術式。(文系術式はこの例に入らない完全なイレギュラーである)

この法則性をひっくり返しかねないほど、四姫には才能はあるとでもいうのだろうか?
だとしたら、その才能は煉瀬の血縁者のそれに十分匹敵しうる。

「もしかして、とんでもない娘を弟子にしちゃった?」

不意打ちどころではない、驚愕の事実に、詩織は体が冷えているのも忘れて、その場にへたり込んだ。









to be continued.....












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★ プロフィール
HN:
上城 遊馬
性別:
男性
自己紹介:
前のハンドルは宇宙飛行士な名前だったり。
三流国立大学の隅っこで映像制作をする不良大学生です。
アウトドア派でクリエイター気取り。
ぬるぬると文章を書き連ねておりますのオタク。
東方大好き、MGS大好き、特撮大好き、アニメ大好き、小説大好き、料理大好き、キャンプ大好きな人間です。

もうちょっとしたらPixivの小説投稿を本格的に始めようかな……
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